前回、昼間に雪化粧の京都を散歩した様子を書きましたが、同じ日の夜にちょっと遠出をして京の奥座敷と言われる貴船まで行ってきました。
貴船といえば夏場の涼しい気候を生かして、清流の上に設置された川床で涼を取りながら食事を楽しむ場所というイメージがあると思いますが、実は冬についても積雪の日限定で貴船神社のライトアップが行われるため、その幻想的な景色がひそかに人気を集めているという事を少し前に知りました。
今回の積雪はまたとない機会だと思い、昼間の歩き疲れを若干感じつつも、夜の雪景色を求めて山あいの貴船を目指す事にしました。
移動(叡山電車 出町柳駅~貴船神社)
昼間の散歩を終え、叡山電車の出町柳駅にたどり着いたのは夕方5時近くでした。夜の散歩はここからスタートします。
貴船神社のライトアップは積雪日限定という事なので、行ってみるまで実施されるかわからないものだと思い込んでいました。
しかし、出町柳駅の改札付近に、本日は貴船神社のライトアップがあるといった事が書かれた立て看板を見つけたので、安心して電車に乗り込む事ができました。
後でわかったのですが、貴船神社のTwitterやFacebookの公式アカウントでライトアップが行われるかどうかの情報も発信されている様でした。
2両編成のコンパクトな電車に約30分ほど揺られ、市街地とは比べ物にならない量の雪に覆われた山あいの貴船口駅に降り立ちました。明らかに昼間に滞在した場所よりも気温が低く、寒さを感じます。
電車はさらに天狗伝説で有名な鞍馬の方まで向かうのですが、大半の乗客はこの貴船口駅で降りていました。
貴船口駅を出てから更にバスに乗って移動する事になるのですが、このバスを待つ長蛇の列ができているのを見て、軽く衝撃を受けてしまいました。冬という事もあり、シーズンオフでそれほど混んでいないだろうと高をくくっていたのですが、見事に予想を裏切られました。
一応バスのダイヤはあるのですが、この日は相当混雑しており、到着次第出発する実質ピストン輸送の様な状態になっていました。それでも乗車までに約30分以上待ったと思います。
待つ事に耐えきれずに、列を離れて徒歩で向かう人もちらほらと見かけました。徒歩だと大体30分強かかる上、雪で足場が悪くなっているため、そちらの選択肢もかなりハードな気がします。
ようやくバスに乗る事ができ、行先の「貴船」バス停に降り立つ頃には、もうすっかり日も落ちて薄暗くなっていました。
移動はここで終わりではなく、更に薄暗い雪道を歩いて貴船神社に向かう事になります。
道中の景色はもう雪国と言って良いのではないかと思うほどでした。薄暗い夜道でも微かな雪明かりと、点在する照明の光で幻想的な景色を作り出しています。
貴船神社 本宮
しばらく雪道を歩いて行くと、貴船神社本宮前の鳥居(二の鳥居)が見えてきました。
しっかりとライトアップされて朱塗りの鳥居が綺麗に浮かび上がっています。
このあたりから参拝客の人混みが出来始めます。バスを待つ長打の列を見た時も思ったのですが、積雪日しか行われない不定期のライトアップに合わせてこれほどの人が集まるとは意外でした。
鳥居をくぐると更に人が増え、ライトアップの最大の目玉とも言える、灯篭が立ち並ぶ参道に入ります。
この付近では多くの参拝客が立ち止まってカメラやスマホで景色を撮影しているため、なかなか前に進みません。先を急ぐ場合は、立ち止まる人々の間を縫って進むしかありません。
自分も気が済むまで撮影した後、雪で滑りやすくなっている石段に注意しつつ、人込みの間を縫って進む事にしました。
思いもよらない混雑ぶりで若干気持ちの余裕が無くなりかけていましたが、立ち止まって改めて眺めてみると本当に幻想的ですばらしい景色でした。綿帽子の様に雪を被った灯篭が両脇にずらっと並ぶ姿も圧巻です。
参道の階段を登りきって門をくぐると、雪の積もった建物や木の枝がうっすらとライトアップされているのが見えました。
下の写真では暗くてわかりづらいかもしれませんが、煌々とした光に照らされるのとは違い、控えめな光でぼんやりと照らされるライトアップは趣があって良かったです。
本宮の前まで来ました。貴船神社の本宮と奥宮には水の供給を司る高龗神(たかおかみのかみ)という神様が祀られています。
この貴船一帯は京都市街を流れる鴨川の水源地にもなっている様で、その守り神として水の神様が祀られているという事に妙に納得感があります。名水が湧いていたり、水占みくじという独特のおみくじがあったりして、パワースポットとしても人気が高い様です。
本宮のすぐ前に、その名水「御神水」が湧いており、無料で汲む事ができる様になっていました。私もご利益がありそうだったので思わず一口御神水をいただいたところ、単に喉が渇いていたためか、何か神聖なパワーのおかげなのかわかりませんが、とても美味しく感じました。
今回水占みくじは行わなかったのですが、どういったものか少しだけ説明すると、一見何も書かれていない空欄のおみくじの紙を購入し、これを水に浮かべると文字が浮かび上がって結果がわかるという、何とも風流なおみくじの事です。
本宮への参拝を終え、裏参道の石段を足元に注意しながらゆっくり下って行きます。
下り終えると再び通り(京都府道361号)に出るので、今度は奥宮を目指してさらに歩きます。
貴船の街並み
先ほど通った貴船神社の入口あたりから、料理店がちらほらと現れ始めます。夏場は屋外で川床営業をしていますが、さすがに冬は屋内のみの営業でした。
道路だけではなく、その脇を流れる貴船川もすっかり雪化粧をしていました。
夏には川床が設置されると思われるポイントにもしっかりと雪が積もる景色を眺めていると、ちょっとだけ夏が待ち遠しくなってきます。
更に進むと、お店の明かりが多くなり少し賑やかな景色になってきました。このあたりまで来ると本宮の様な人込みは無くなるのですが、お店の明かりは増えてきます。
貴船神社 結社(中宮)
奥宮までの道中、下の写真の様に結社(中宮)という社殿の入口がありました。磐長姫命(いわながひめのみこと)という縁結びの神様が祀られている様です。
せっかくなので、立ち寄ってみる事にします。
ここも見るからに滑りやすそうな石段を上ってゆき、鳥居をくぐると先ほど通った本宮前の参道をコンパクトにした様な感じに並ぶ灯篭の奥の方に結社がありました。
仕事やプライベートでの良縁を願ってここでも礼拝し、再び先ほどの通りに戻ってきました。
貴船神社 奥宮
結社の入口で「神氣満ち満つ奥宮へ あと5分」と書かれた立て札を見つけると、奥宮はただならぬパワーが宿っている場所なのかと勝手に想像をしてしまいます。
引き続き、料理店の明かりや貴船川の雪景色を楽しみながら雪道を歩いて行きます。
道路に積もる雪は、車の通った跡がシャーベット状になっており、幸い凍結まではしていなかったため、何とか通常のペースで歩くことができました。
先ほどの立札に書いてあった通り、大体5分ぐらい歩くと奥宮の鳥居が見えてきました。心なしか本宮前の鳥居よりもたくさんの雪が積もっている様に感じました。
鳥居をくぐって奥に進み、神門の前まで来ました。
奥宮周辺のライトアップは本宮より照明が少な目だったため、ここで撮った写真はさらに暗めになってしまいました。実際に肉眼でも暗いと感じるほどでしたので、無理もないかもしれません。
門をくぐって奥に進むと、向こう側にわずかな照明でうっすらと浮かび上がる奥宮が見えました。
ここも本宮と同じく、水の神様である高龗神が祀られていますが、ここまで訪れる人はかなり少なくなります。
奥宮でも参拝を済ませ、貴船神社にある3つの社殿全てで参拝を済ませた事になります。
後で知った事ですが、実は今回私が参拝した順番は正式なものではないそうで、正しくは本宮、奥宮、結社の順なのだそうです。この正しい順番に参拝すると願いが叶うとも言われているそうなので、ちょっとくやしい気持ちになりました。
それはさておき、この時は体も冷え切っていたため、参拝後のお楽しみという事で、来る途中に見かけた料理店のいずれかに入って食事をする事にしました。
夕食(ひろ文)
料理店はどこも高級そうな立派な店構えの所ばかりで、どこにしようか迷いながら歩いていると、先ほど訪れた結社のすぐそばに、比較的リーズナブルなメニューを店先に掲げる「ひろ文」というお店が目に入りました。
このお店では、「鮎と京湯葉のにゅうめん」というメニューが税込1,760円(2023年1月時点)で食べられるとの事で、料理の写真を見ても京都っぽい要素を押さえつつ、絵的にも美味しそうに見えたため、ここで食事をする事にしました。
暗く寒い雪道を歩いてきた後に暖房の効いた暖かい店内に入ると、生き返る様な気持ちになります。店内は比較的空いており、どこに座っても良いとの事だったので、お座敷に座らせていただく事にしました。
改めて卓上にあったメニューブックを開いて一通りチェックしてみましたが、会席料理や鍋料理などが中心で、やはり全体的にお値段はそこそこ張るものばかりでした。
今日ぐらいは奮発しても良いかなと思いつつも、先ほど気になっていたリーズナブルなメニューも捨てがたく、結局最初の気持ちを尊重して「鮎と京湯葉のにゅうめん」を注文する事にしました。
暖かい店内で身も心も落ち着ついてくると急に空腹感を覚えるようになり、今か今かと待っていると、待望の料理が運ばれてきました。見た目や盛り付けも上品で、美味しい要素しか見当たりません。
まずは、にゅうめんを一口すすってみると、出汁で煮込まれた暖かいそうめんが、私の体を中からじんわり温めてくれます。
京都ならではの湯葉も温かい出汁と良く合う優しい味わいで、これもまた体が温まります。
甘露煮の鮎は何と子持ちの鮎でした。魚卵系も好きなので、ちょっと得した気分になり食べてみると、見た目通り上品な味わいでした。白米とも良く合います。
日本酒にも合いそうなので注文したかったのですが、この後また寒い中を歩いたり、長時間列に並んでバスを待ったり電車を乗り継いだりしながら滋賀の自宅まで帰る事を考えると、お酒は控えておいた方が良いと思い、今回はぐっと堪える事にしました。
料理を完食すると体もすっかり温まり、完全に元気を取り戻す事ができました。リーズナブルなお値段の割にしっかりとした料理を食べる事ができて本当に良いお店でした。
復活した体で再び寒い雪道を歩き始め、帰宅の途に就く事にしました。
住所 | 〒601-1112 京都市左京区鞍馬貴船町87 |
電話番号 | 075-741-2147 |
営業時間 | [春・夏] 川床営業あり 営業期間:例年5月1日~10月中旬 営業時間:昼11:00~14:30、夜17:00~21:30(21:00 LO) ※雨天または貴船川増水時は川床営業中止 [秋・冬] 営業期間:例年10月中旬~4月 定休日:12/30~1/1 営業時間:昼11:00~14:30、夜17:00~21:30(21:00 LO) |
アクセス(公共交通機関) | 叡山電車 貴船口駅で下車 京都バス(33系統)に乗り換え「貴船」バス停下車 徒歩約10分 (貴船口駅から徒歩の場合は約30分) |
アクセス(自家用車) | 名神高速道路 京都東IC または 京都南ICから車で約70分 ※駐車場あり(15台)流しそうめん客は利用不可 |
公式ホームページ | https://hirobun.co.jp/ |
公式SNSアカウント | (Instagram)https://www.instagram.com/kifunehirobun/ |
まとめ
今回は夜の雪景色を見るため、京都市北部の山間部に位置する貴船まで行ってきました。
夏の川床のイメージが強い貴船ですが、雪を纏った冬の装いは夏とは全く異なる魅力があり、それを確認できただけでも訪れて良かったと思います。
貴船神社の積雪日限定のライトアップは、他所でも良く行われる桜や紅葉のライトアップと比べれば派手さは無いですが、夜の闇にほのかに灯る光に照らされた雪景色はとても幻想的でした。
ここまで来るための電車やバスの本数が少なく、その割りにかなりの混雑となったため、待ち時間も多くなり大変でしたが、その苦労が報われるくらい美しい景色を見せてくれる場所だと感じています。
今度は夏の川床シーズンにも訪れて、改めて冬の貴船との違いを感じてみたいと思います。
住所 | 〒601-1112 京都市左京区鞍馬貴船町180 |
電話番号 | 075-741-2016(電話受付時間 9:00~17:00) |
拝観時間 | [本宮] 開門:6:00、閉門:18:00(12/1~4/30)、20:00(5/1~11/30)(年中無休) ※ライトアップ等の特別参拝日は上記と時間が異なるため、公式ホームページやSNSアカウントを参照) [授与所受付] 9:00~17:00 |
アクセス(公共交通機関) | 叡山電車 貴船口駅で下車 京都バス(33系統)に乗り換え「貴船」バス停下車 徒歩約5分 (貴船口駅から徒歩の場合は約30分) |
アクセス(自家用車) | 名神高速道路 京都東IC または 京都南ICから車で約60分 ※駐車場 800円/2時間 本宮(10台)、奥宮(15台) |
公式ホームページ | https://kifunejinja.jp/ |
公式SNSアカウント | (Twitter)https://twitter.com/kifunejinja (Facebook)https://www.facebook.com/kifunejinja/ ※積雪日限定ライトアップ実施有無の告知あり |
公式Youtubeチャンネル | https://t.co/wsQuYX7Kmm |
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